産業医としての医療行為

産業医とは

企業で働く従業員たちの健康管理や健康に関するさまざまな業務を行う「産業医」。

医師ならば誰でも産業医として働けるわけではなく、労働安全衛生法によって定められた要件を満たし、産業医として認定されていなければなりません。

産業医は、企業で働く従業員の面談を行ったり、健康診断結果のチェック、事業所内の巡視などを行うのが主な業務となります。

産業医の多くは、嘱託産業医と呼ばれる医師です。嘱託産業医は、非常勤職員として企業と契約しており、普段は病院で勤務していたり、自身の医院を開業していたりする場合が多いです。

嘱託産業医以外では、企業に所属する専属産業医と呼ばれる医師がいます。専属産業医は、嘱託産業医のように非常勤という扱いではなく、企業組織の一員として勤務します。

産業医と医療行為

嘱託産業医も、専属産業医も医師としての資格を保有していることには変わりありませんから、産業医の仕事は一般の臨床医師と同じと思っている人も多いかもしれません。

たしかに、産業医も臨床医師も人の健康に関わる仕事という点は共通しています。

しかし、産業医が臨床医師と同じように医療行為を行うことは禁止されているのです。たとえば、企業において健康診断や予防接種などが実施されることがありますね。

健康診断や予防接種のようなイベントは産業医が企業と相談のうえ設定するので、いかにも産業医自身が診察や注射を行うように思われがちです。

しかし、健康診断や予防接種といった行為は医師による医療行為とみなされるため、医療行為が禁止されている産業医では行うことができません。

企業内で健康診断や予防接種を行う場合には、専門の医療機関や医師が医療行為を行うことになっているのです。

とはいえ、多くの産業医は嘱託産業医として病院に所属していることがほとんどです。

そのため、従業員がなんらかの不調を訴えた場合は、産業医が普段所属している病院や医院を紹介し、その病院や医院で治療を受けることは可能となっています。